創業者メッセージ

過去60年に亘る回顧

私がソフトウェア開発の業界に就職したのは、1960年4月であります。1971年に株式会社ジャステックを設立するまでの12年間にわたり、SEとしてのソフトウェア工学、SEの評価およびIT企業の経営の在り方について、当時の経営トップや業界関係者と私の考え方の違いに悩みました。

1971年

株式会社ジャステック設立

これまでの経験を基に4つの企業理念を設定しました。

  1. 1.IT企業は知識集約産業であること
  2. 2.社員は能力主義に基づき、且つ株主として経営に参加すること
  3. 3.市場の確立に努めること
  4. 4.社会に貢献すること

IT企業を知識集約産業として捉えたのは、我が国の優秀な製造業のようにコストおよび品質等に基づく企業間競争の中で、自らの改善改革を発揮して実現したシステムを顧客に提供することを通して、健全な市場の確立に努める企業を意味します。

1975年頃

IT企業の営業案内

この頃のIT企業の会社紹介パンフレットは、本社ビルとか、システムを利用する対象業務のハードウェア、例えば座席予約システムを使う新幹線、飛行機等のハードウェアを紹介する形式のものが大半であった。
これに対し、ジャステックは知識集約産業を標榜するIT企業として、あるべき広報の仕方を研究してきた結果、次の内容を営業案内の形で発表しました。

  • IT企業対顧客の共通認識(趨勢と環境、経営者および開発技術者の有様)
  • IT企業(優良・不良)と顧客(優良・不良)の組み合わせについて、IT企業および顧客のそれぞれのプラス面とマイナス面を分析
  • 生産性および品質の根拠となる定量管理モデルの初版

1985年頃

能力主義

IT企業の各種業務の生産性および品質に基づく能力評価方式を確立

  • オープンな能力評価(基準の公開、集団による双方向評価)
    四半期ごと実施、知識および錬度は1~4点で評価、
    創造を伴う改革の達成は5点で評価
  • 能力評価に連動した給与体系
    能力評価結果を給与に反映、男女区分なし、学歴区分なし
    フレックス勤務制度導入
    8等級(8種類)の給与
  • 1~4等級 : 一般職、 5~8等級 : 管理職および専門職
  • 取締役の評価と報酬

2000年~2019年頃

一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)

1997年4月~2015年5月 理事に就任

  • 理事選任の度に定量管理をライフワークとすることを宣言し続けました
  • JISA市場委員会で定量管理に賛同を得たNTTデータ社と共に、その必要性を訴えたが、以降JISAの会員には浸透しませんでした
  • 2015年 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)からの要望で、既に市場委員会で前任者が手掛けた資料を基に、IT企業の評価基準をまとめることになりましたが市場委員会で反対となりストップとなりました
  • 2015年79歳をもって理事を退任しました

2005年〜2017年

海外進出

LTU(フランス)買収

  • 商品:画像処理および検索(シミラリティ)パッケージ
  • 取引国:アメリカ、カナダ、ヨーロッパ各国、シンガポール、ウクライナ等々
  • 適用業務:犯人捜査、企業ロゴの不正摘発、ワインラベルからのワインの特徴(情報)の取得、有名アーティストのグラフィティの撮影による商店の販促への使用等々
  • 蓄積ノウハウ:海外ITベンチャー買収、技術紹介に関する会社および人脈形成

AIの登場で、2017年に撤退

2010年

会社の中長期予算(事業計画)

重点的に改善、改革を継続する項目として14項目を設定
定量管理、工程定義、社員の職務分掌、顧客打合せ、チーム力、購買、その他8項目

2020年の現状と近い将来の展望

現状、私が意識している業界の抱える諸問題について述べます。

工事進行基準

  • 工事進行基準適用前の決算期に仕掛かっているプロジェクトの売上および利益の処理
  • 月次売上の中に入っているであろうバグ類の処理
  • 工程全体の見積総原価に対する月次発生原価をもって完成率とすることを前提とするには、ソフトウェア製品の単位量に比例する費目が不明の現状では、市場に迷惑をかけるばかりになるので、この解決が先決として取り組む計画を立てています
国(省庁間・デジタル庁)および地方自治体のITシステム

過去10年以上に亘って取り組んでいるようですが、ユーザーごとの要件定義技術も開発に関する生産性や品質を保証するソフトウェア工学に関する技術も確立していないため、これから再度取り組むことになるが上手くいく保証はない。

大手ユーザー25年問題

独自性で業界をリードする大手ユーザが、発注した大手IT企業によるソフトウェア開発の失敗が多いことから、海外パッケージの導入に動くも、多数の販売を見込み汎用性を重視したパッケージでは大手ユーザの独自要求を満たさず、機能追加を繰り返す泥沼に入り込んで納期遅れあるいはコスト増となり、果ては開発中止になる場合も出てきています。このような状況をカバーする大手IT企業もなかなか見つからないようです。

製造業の挑戦

ここに来て非常に素晴らしいことであるが、特に自動車メーカー、半導体メーカーおよび6Gメーカー等々において、世界的競争が始まっています。自動車についてはレベル4に搭載する多機能プラットフォーム、半導体については超多機能半導体および6Gメーカーにあっては大容量高速通信への取り組みが開始されています。
こうした状況下、日本のIT企業が準委任契約(たとえ一括請負契約であっても結果は同じ)で製造業をサポートしたとしても、その結果製造業の挑戦が世界で太刀打ちできるだろうかと懸念しています。こうした事態にならないように生産性および品質を保証する礎となるソフトウェア工学に関する技術を蓄積し挑戦し続けるIT企業が望まれることになると考え、ジャステックは微力ながら努力して参ります。

最後の言葉 2022年1月4日

ジャステックはIT産業を知識集約産業として位置づけ、このことに賛同するIT企業、顧客、社員、入社してくるであろう学生諸君および社会、国家と力を合わせ世の中に貢献してまいります。

神山 茂